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食用としての犬 [食文化]

張競著『中華料理の文化史』(ちくま新書・1997年刊)は、
コンパクトにまとまった、中国食文化史の本として、手ごろで
読みやすく、なかなか便利な書である。だが、読めば読むほど、
このような新書一冊に「中国料理」を論ずることの無理を感じてしまう。

たとえば全七章のうちの一章に「犬肉を食うべきか食わざるべきか」
が当てられている。中国料理に犬という食材が果たしてきた歴史的経過と、
最近のペット化の進行による「犬料理忌避」の傾向が記されている。

だが、はたして、この書が書かれた九十年代の半ばに
「犬食」が減少していたのかどうか、言い切れないように思うのだ。
私が2001年に中国東北地方に滞在していた時には、周囲に犬料理の
店が沢山あり、外国人が宿泊するようなホテル内のレストランでも、
堂々と「犬料理」がメニューに載っていたからである。

作者の張氏は、上海の出身らしい。そうなると中国東北部の
食事情にはあまり詳しくはない、ということが想像される。
中国は大きくて広く、民族も多様で、食を巡る状況も複雑で多岐にわたる。
新書一冊の「食文化論」には大きな限界があるのは当然のことだろう。

最近、中国東北部の友人と話した時も、彼女はちょっと
照れたように笑って、
「犬、もちろん食べてます。美味しいですよ」
と言っていた。もちろん、ペットの犬とは厳密に区別され、
食用として飼育されているものである。
特に中国内の朝鮮族は犬を多食する傾向にある。
その朝鮮族が多数住む東北地方にかぎっていえば、
張氏が『中華料理の文化史』のなかで指摘されているような、
「犬料理は乞食しか食べないものに成り下がった」ということは、
ない。むしろ、高級料理のうちに入り、滋養豊かな
薬膳的な料理として尊ばれている、といっていい。
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トルコ料理 [食文化]

何という映画だったか忘れてしまったのだけれど、
その映画に登場する年配の男性は、かつてトルコ領内に住む
ギリシャ正教徒だった。

百年近く前、トルコとギリシャの間で、「住民交換」が行われた。
ギリシャ領内のイスラム教徒はトルコ人としてトルコに強制的に送られ、
逆にトルコ領内のギリシャ正教徒はギリシャ人とみなされて、
ギリシャに強制的に移住させられたのである。
その折、映画に出てきたその男性は、ギリシャに移るのを拒み、
とうとうイスラム教へ改宗してしまった、とかいう話だった。

なぜか。恋愛ならまあ、考えられる。でもこの映画は、恋愛映画では
なく・・・。食文化をめぐる物語で・・・。そう、男性は
「トルコの食べ物はうまいが、ギリシャは絶望的に不味い」
ということで、移住を拒んだのだった。それって、わかる気がする。

ギリシャには行ったことがないので、想像するだけだが、
トルコには二度行っていて、その限り、トルコはまさに
食の大国だ、と知ってしまったから。世界三大料理として
フランス、中国、の料理と並んで賞されることが多いが、
私は、ダントツでトルコがトップだと思う。

キョフテと呼ばれる挽肉(羊肉が多い)料理、お米を
ピーマンやブドウの葉などにくるんで作るドルマ類、
ヨーグルトを使ったさっぱりとしたサラダ、種々の豆料理、
信じられないほど種類の多い漬物類、抜群においしいパン類。
羊は頭から内臓まで、余すことなく食べる。頭は
さすがに引いてしまうけれど、柔らかく煮込んだ内臓類は、
素晴らしく美味である。さらにサバ、スズキ、カキ、などの
海産物も豊富に登場する。

お菓子も豊富にある。アラビアのパイであるヴァクラバ、
マドと呼ばれる、粘着的なアイスクリーム、お米を使った
プディングも美味である。

街角にある、小さな食堂のようなところで食べる料理が
値段も手ごろな上に、驚異的に美味で、こんなに食べ歩きの
楽しい国は、少ないのではないか・・・。
トルコは西洋と東洋の分岐点にあたる国。
でも胃袋の方を考えると、圧倒的に東洋的、だと思う。
そして、一度トルコに住むと、西洋には戻りたくない、はずである。

東京にもトルコ料理が食べられる店があって、私はチェコ人の
友人にその店を紹介してもらった。短歌の仲間のAさんが
歌集を出されたとき、お祝いに食事をふるまおうと思い、
彼女の自宅がそのトルコ料理店からほど近いところにあることを
思い出した。彼女が「どんな料理も大丈夫、好き嫌いはないの」
というので、「トルコ料理はどう?」と尋ねると途端に、
「え、それはちょっと」と、一蹴されてしまった。
ちょっとがっかり。やっぱ、知らない人は抵抗あるかなあ。
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熱帯の果実(その8) [食文化]

熱帯の果実、と言えば、外せないのがドリアン。
果実の魔王、ともいわれている。長径が四に十センチ、
短径二十センチくらいのラグビーボールのような楕円形で、
重さは二、三キロほどにもなる大型の果実。
表面に、無数の突起があり、割ると乳白色の果肉の
間に、濃い茶色の大きな種が顔を出す。

ドリアンについて知ったのは八十年代前半頃で、
それからずっと食べてみたいとは思ってきたが、
熱帯の果実とはいえ、季節があるらしく、出かけたときに、
必ず出会えるとは限らない。その上、ホテル内に
持ち込み禁止、とされる場合が多く、市場で見かけても、
購入することができない、ということも多かった。

理由は匂い、らしい。中には玉ねぎの腐ったよう、
あるいは癖のあるチーズのよう、とか、様々な言われよう。
だが、味はねっとりとしたクリームチーズか、カスタードの
ようで、病みつきになる、という説も強くあり・・・。
どうしても一度は経験したいと思いながら日が過ぎた。

初めて口にすることができたのは、九十年代に
シンガポールを訪れたときだった。街角で、
切り売りしながら売っていたのである。
これなら、ホテルに滞在中の私にも購入できる。
早速購入して、食べてみたのだけれど・・・。

特殊な匂いは感じられず・・むしろ、熱帯の果実の
ごく平均的な匂いではないか、と思えたくらい。
さらに味は、というと。う~む。
果実は当たり外れが大きいので、私が口にしたのは
はずれ、だったのかもしれない。ねっとりとした
食感はうわさ通りではあったが、特に美味、というわけではなく。
(ペルーでたべたシャカトウの方がうまかった)。
あれ以来、私はドリアンを口にしていない・・・。

大きくて高価で食べにくくてホテル持ち込みが禁止されていて
・・・。と難儀なドリアンに拘泥するよりも、熱帯では
他にも、美味で安価で食べやすくて、ホテルの冷蔵庫に
冷やしておいて、プールで泳いだ後、ゆっくり味わえる、
そんな果実が沢山あるからである。(この項、終わります)
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熱帯の果実(その7) [食文化]

海外で出版されている、果実に関する本や図鑑の類には、
日本人にとって「これが果実?」と意外に思われるものが
多々含まれている。何度か触れた『Tropical Fruit』の他に、
カリブ海の島々に育つ果実を紹介している本、
『Fruit Trees of the Caribbean』という本も持っているのだが、
ここにも、意外な感じの種類がいくつか。

タマリンドは、この二書に共通して登場するが、これなどまさに、
「日本人に耳慣れない、意外な果実」の一つではないだろうか。
大きな樹木から、そら豆状の莢がぶら下がっているさまは、
まさに木に実る豆、という雰囲気・・・。見た目からして
果実には遠い感じ。

農林省熱帯農業研究センター『東南アジアの果樹』には、

  果実は長さ8~20cm、灰褐色やや棒状の莢果で裂開しない。
  外角は比較的脆く、中に種子を包む暗紫赤色の果肉がある。

と、詳細な説明がある。さらにその樹木については

「雄姿優雅な大樹で、樹皮灰褐色、高さ25m、幹周8mにも及ぶ。
葉は緑白色の偶数羽状複葉・・・・噛むとわずかに酸味を感ずる」

と的確に説明されていて、インドの高原の大木を吹き上げる、
風の音が聞こえてきそう。

日本ではほとんどみかけない果実だが、インドやアラビアでは最重要
植物のひとつ、らしい。面白いのは名の由来で、タマリンドとは、
Tamar-i-Hindi 、つまりインドのナツメヤシ、から来ている。
そういえば、アメリカで知り合った女性にタマル、愛称がタミー、
という女性が何人かいて、「意味は、ナツメヤシ」と言っていた。

タマリンドは生食もできるらしい。風味はアンズに似ていて、
甘味もあるが、かなり酸味が強いのだとか。それで、塩漬けにして
調味料とする使用法が最も一般的。カレーなどにも使われる。

フィリピンでは日本の味噌汁に当たるようなスープ、
シニガン、と呼ばれる料理があって、これが素晴らしく美味である。
味付けの決め手は塩漬けのタマリンド。日本では入手できないので、
私はタマリンドの代わりに、梅干しを使う。それで、かなり
本場の味に近いものができます。このあたりで、タマリンドが
どんな果実か、かなりイメージできてきますね。


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熱帯の果実(その6) [食文化]

龍眼(ロンガン)と茘枝(レイシ)。
いずれも中国南原方産とされている果実である。
龍眼は、漢字の国の住人ならすぐにわかる通り、
龍の眼で、見た目が動物の眼のような果物。
茶色の外皮を剥くと、真珠色のやや不透明な果肉が現れ、
その奥に漆黒の大きな種が透けて見える。そのさまが、
まさに動物の眼のように見えるからである。
ここであえて龍の眼とされたのは、中国ではもっとも
威厳のある動物だから、らしい。

さて、茘枝の方だが、こちらは漢字の字面を見ても、
特に特別な意味は感じられず・・・。漢和辞典で
「茘」について調べてみると、「おおにら、草の名前」と
出ているだけである。ところが、この項の最初の回で
採り上げた『TROPICAL FRUIT』にはこのレイシとは、
中国語で「人生の楽しみをもたらす者」という意味がある、
と紹介されているのだった。ふ~む、どこから入手した情報か。

ともかく茘枝といえば、かの楊貴妃がぞっこんだった果実で、

  妃は茘枝を嗜(この)み必ず生のまま之を致さしめんと欲す

と『新唐書』に書かれているのだとか。つまり南方に特急便を
頼んで、大量に送らせていた、のだそうである。

茘枝も龍眼に似た果物だが、表皮は美しい紅色、これを剥くと、
真珠色の果肉の奥に見えるのは、茶色い楕円の種である。

食べ比べてみると、龍眼の方が果肉がしっとりとして美味。
見た目が美しいのは茘枝。名前の響きも茘枝に軍配が上がりそう。
さて、楊貴妃は龍眼を知らなかったのか、
はたまた、見た目や響きの美しさで茘枝を選んだのだろうか・・・。
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熱帯の果実(その5) [食文化]

タイでは先回触れたマンゴスティーンの他にも、
まるで見た目がウニみたいな奇妙な果実、ランブータン
等にも出会った。果皮に硬い毛のようなものが密生していて
ランブータン(Rambutan)のRambutとは、マレー語で
毛、という意味だそうである。

滞米時の1986年春、私はアメリカで同級生だったペルー出身の
ソフィアの実家に招かれていったことがある。リマの市場にも
沢山の珍しい果実が溢れていたが、その中でも美味だったのが
シュガー・アップル、日本ではバンレイシなどという名で
紹介されている、西インド諸島原産の果物である。
別名「釈迦頭(シャカトウ)」ともいう。
なるほど、お釈迦様の頭のように、つごつとした突起がある。

この突起のある緑色の皮をむくと、乳白色の果肉が現れる。
この果肉が完熟していると、とろ~りと滑らかにして
果汁たっぷり。本当に旨い!
日本ではほとんど見たことがないので、たぶん
傷みやすくて輸出には向かないのだろう。
この「熱帯の果実」の項の冒頭で紹介した

『TROPICAL FRUIT』という本の中には、同じ種類の
果実としてCustard Apple(カスタードアップル) 
という果物も掲載されている。カスタードアップルは、
きれいなハート形をしたシュガーアップルを
上から押さえつけてひしゃげさせたようなやや、ごつい
形をしている。だが、味はまるでカスタードクリームのようである、
と紹介されているので、もしかするとシュガーアップルより
美味なのかもしれない。多くの野生の実が見た目と味とが
半比例する傾向にあるから・・・。        (続きます)
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熱帯の果実(その4) [食文化]

私にとって、熱帯の果実との第二の邂逅は
1980年代前半のことになる。相棒が、所属する学会の
世界大会でインドネシアに出かけたのは1983年のこと。
当時私はお勤めしていたので、同行していない。
それまで、私たちは結婚三年後の夏に休暇を取って、
欧州へ旅行していたが、アジアへは一度も行っていなかった。

帰ってきたとき、彼はかなり興奮気味だった。いかに
アジアが面白いか、について、しばらく熱く語り続けていた。
遺跡などの建築物に見応えがあること、街に活気が溢れていること、
食材が豊富なこと、熱帯の果実がいかに
多様性に満ち、美味であるかについて・・・。

それまで、私はアジアにはやはり偏見が
あった。当時は、私のみならず、多くの日本人が、アジアは汚くて、
物騒で、わざわざ休暇を取って訪れるようなところではない、
と思い込んでいたのではないだろうか。

インドネシアで彼が最も印象深く語っていたのが、
その時の旬であったのだろう、マンゴスティーンだった
「すごくおいしいんだ。それに安いんだよ、一ドルも買ったら、
食べきれないほどたくさんの量になっちゃうんだ」

私は翌年、相棒と共に、タイへでかけ、マンゴスティーン
なる果実と対面することになった。形は柿に似ている。
皮は樹皮のように固いが、爪をたてるとぱかっと、
意外に簡単に割れる。内側には、蜜柑の房のように
楕円形の白い果肉が球形にならんでいる。

果肉は爽やかな果汁に溢れ、これまで食べたどんな
果実の味とも似ていず、素晴らしく美味だった。
           (続きます)

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熱帯の果実(その3) [食文化]

昭和三十年代、現在の状況からは信じられないほど、バナナが
高級果実だったわけだが、私はその理由として、ぼんやりとだが、

1、遠隔地から運ばれてくること
2、貴重な果物で大量に収穫できないこと

などのせいと思い込んでいた。だから、まもなく
バナナがものすごく安くなり、また見たこともなかった
グレープフルーツなどの異国の果実が安価に出回る様子に、
驚嘆したのだった。熱帯の果実とは、実のところ大量に実り、
現地では水よりも安いらしい、と気づいたときは衝撃だった。
輸出入にまつわるモノの値段の仕組み、というものを私に
最初に気づかせてくれたのは、果物だった、ということになる。
                       (続きます)
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熱帯の果実(その2) [食文化]

私にとっての熱帯果実との出会いは、第一次、第二次と
大まかに二つの時期に分けられるように思える。
第一次は、小学校低学年時、初めてバナナを食べ、さらに
中一の時に初めて生のパイナップルを食べた、という経験。
バナナは輸入物だったろう、私と妹が食べたいと大騒ぎするので、
春休み、母の実家のある山形市に出かけたとき(私たちは山形県内でも
山間の過疎地に住んでいたので、山形市に出かけることは
田舎もんが都会へ行く、感じ)、食べさせてもらったのだった。

この時、バナナが三本で百円だったことを覚えている。
当時の百円は、デパートの食堂で、チキンライスと
ソフトクリームが食べられるくらいのねだんだったから、
今なら千五百円くらいの値になるだろう。母が渋ったのも無理ない。

パイナップルは父の部下に当たる人が、新婚旅行で
宮崎へ行った時のお土産だった。(をを、宮崎! 私たちは
その後まもなくテレビ放映された『巨人の星』に夢中になり、
南の国の宮崎に、ほのかなあこがれを抱いた。星飛雄馬が
恋を育てた地としても)

正直に言おう。バナナもパイナップルも、どちらも不味かった。
たぶん、追熟が十分でない前に食べちゃったからだろう。
熱帯の果実に、子供である私たちは無論、北国育ちの
両親も対応できなかった結果だったろう。(続きます)
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熱帯の果実 [食文化]

Desmond Tate『TROPICAL FRUIT』はお気に入りの一冊。
「30%SAVING」(三割引き)のシールが貼ってあり、
そこに小さくKINOKUNIYAと記してある。よく覚えていないが、
たぶん、シンガポールの紀伊国屋書店で購入した本。
出版社もシンガポールのArchipelago press である。

見開き二頁ずつ、熱帯の果実の各種が、大きなカラーの
細密画つきで紹介されている。果肉や種の様子も
わかるように、二分割した絵、幹に実っている様子、
なども添えられていて、図鑑っぽいが、手短に
果実についての文章もも添えられていて、読んでも面白い。

難点は、紹介されている果実がたったの四十種ということ。
Bael Fruit とか、Bilimbi など、見たことも聞いたこともなく、
何やら不気味な果実もあって、凄いなあ、と思われる一方、
柿、南瓜、スイカ、なども含まれていて、ええ、これが
熱帯の果実なの?! と驚かされるのだが・・。
(この項、続けます)
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